事業を営む上で、「税金」をどう捉えるかは、重要なテ-マであります。
そのとらえ方によって将来大きく影響されます。
税金は国民の義務とか、社会貢献の一つであるというような価値観は別として、会計事務所として言いたいことは、「一つ世の中の仕組み」として捉えることだと考えます。
とするならば、いきなり、結論的な言い方になりますが、「支払税額の最小化ではなく、税引後利益の最大化」を目指すべきだからです。
税金が少なくなることは、手取り額も少なくなることを意味します。
手取額は別の表現をしますと内部留保額として年々積み重なっていきます。
自己資本の増殖です。これは「自己資本比率」という重要な経営指標として表れます。
この額は、年月が経つほど企業間格差をもたらします。
この格差は「体力の差」とも言われます。体力というのは財務力です。
今は懐かしくなりましたが、一時、銀行は、自己資本比率8%確保とか、4%切ると国有化されるとか、騒がれました。一般企業も同じです。ただ比率となる基準値が違うだけです。
みなさんは税金をコストと割り切れますか?企業存続のためのコストと捉えることが出来ますか?
京セラの稲守会長が、何年か前に日経ビジネスであったと思いますが、対談で「税金に苦しんだ時期があった。
しかし、コストと割り切ることが出来るようになってから京セラは伸びた」と書いてありました。
現に、毎年、税金ゼロ、もしくは、赤字、もしくはちょっと黒字の会社が、大きく発展をしたというケースは見たことがありません。そして、聞いたこともありません。
経営者と話しをしていると「利益」を「税引後利益」で話が出来る人は残念ながら少ないです。
「税引前利益」で話して見える人が多いです。そういう人は、税金のことは頭にありません。
「そんなに税金を払わなければならないのか」という言葉がすぐ出てきます。
ひどいと、「儲けたって、税金で取られるだけじゃないかぁ!」と恥じらいもなく叫ぶ経営者もいます。
儲けた以上に税金で取られる法律は存在しません。世界中見渡してもありません。
節税という言葉には、どうも反対意見がなかなか出てきません。
「なになに♪ 節税だって? 教えて!」と胸を躍らせるような気持ちについついなってしまう経営者は多いです。
そして、「節税」というのが御上の紋所のようにその言葉が発する表面的な意味だけで大義名分化されてしまいます。
「節税のためにやるんだ」と言われると誰もが口をつぐんでしまいます。
「節税はいいことだ」「税金は少ない方が良いに決まっている」という前提があります。
ですが、節税による副作用は誰も考えません。
税金がゼロだということは、儲かっていないことの裏返しです。
赤字であれば税金ゼロで済みます。何年も赤字であれば、税金もいつまでもゼロで済みます。
ほんとうに税金がゼロで喜んで良いのでしょうか。おそらくこういう経営者の多くは税金以前に
日々の資金繰りに苦しんでいるのが、現状ではないでしょうか。
隣の芝が青く見えることはよくあることです。
「あそこの会社は儲かってるんだから、税金多く払うのは当たり前じゃないか!」と皮肉ぶったことをおっしゃる経営者がいます。しかし、いざ、自分事なると、この当たり前の感覚が、180度豹変します。
「税金払うなって勿体無い!・・・何か対策を練らなければ・・・」
「おぉ!そうだ。ワシの車もそろそろ古くなってきたら、この際、買い換えよう♪」
これは・・・・支離滅裂です(苦笑)
おそらく、税金は「搾取されるもの」もしくは「寄付するお金」という
認識がどこかにあるのでしょう。
「社長・・・・今期は税金(所得税・法人税)は出ません」と報告します。
「おぉ!そうか良かった!ヨシヨシ♪」こう切り返されると「ぇ?」と会計事務所の人間は思います。
まれに、「社長!良かったですね。今年税金払わなくて良いですぅ!」と、それが、朗報かのごとく笑顔で報告する会計事務所の職員もいます。
(これは職業会計人として、恥らうべき姿なのですが・・・)
みなさんのお抱えの税理士先生は、税金ゼロという結果に対して、説教の一つでもしてくれますか?
厳しくも関与先企業への想いの熱い税理士先生は激励してくれることと思います。
誤解を招かないよう言っておきますが、節税に反対しているわけではありません。
節税という「美名」に惑わされないことです。節税には副作用もあると言うことです。
本来残るべきもの、つまり内部留保されるべきものが、流出され、体力が温存されることなく浪費してしまうこと避けなければなりません。
以前バブルの頃は、どの企業もおしなべて利益が出ていました。そこで多くの経営者は考えました。
税金払うより従業員が喜ぶからといって「海外旅行にいこう」「北海道・沖縄へいこう」となりました。
「よし決算賞与を払おう」「教育費に使おう」と研修、セミナ-へと投資?しました。
本来残せるであろう利益が「節税」という美名のもと、惜しげもなく使われました。
残ったのは「お金を使う習慣」だけがのこりました。
この時期に、内部留保を厚くした企業とそうでなかった企業との企業間格差ができました。
まるでというか、正に、童話のアリとキリギリスそのものです。
この不況期に、生き残りをかけた時には、この格差がものをいいます。「体力差」が問われる時代になりました。
「体力」のある企業が生き残っていくでしょう。
税金ゼロは一安心どころか、青ざめなければいけません。
一年間、皆で一丸となって、汗水垂らして働いてきた結果、会社のお財布に一銭も残すことができなかったのですから。
本来ならば、悔し涙を流さないといけないところなのです。
最後に、近江商人の言葉で締めくくります。
「人を残すは上、仕事を残すは中、金を残すは下なり。されど、金なくして事業成りがたし。」 |